ボリショイ・バレエを映画館で―『眠れる森の美女』

『眠れる森の美女』はお伽話の最たるものと言っても過言ではないだろう。要素として、お姫様、王様、お妃様、姫の求婚者達、良い妖精、悪い妖精、魔法、そしてお姫様を接吻で目覚めさせる王子様!しかも、バレエの場合、その上、様々な他のお伽話の主人公たちが姫と王子の結婚式を祝いにやってくるのである。

このような要素が詰まっているにも関わらず、『眠り』はついに私のお気に入りのバレエになりえなかった。とはいえ、近年つらつら考えるに、本当の意味での素晴らしい『眠り』というものになかなか出会えなかったからなのではないかと思いついた。勿論本当に素晴らしい舞台は幾つかあった。私は小さい頃から、イリーナ・コルパコワ、セルゲイ・ベレジノイとリューボフ・クナコワの踊るキーロフ(現マリンスキー)・バレエの『眠り』のビデオを幾度となく観てきたし、マーゴ・フォンティンのオーロラの映像も観た。また、往年の素晴らしいダンサー、リュドミラ・セメニャカの踊る『眠り』の舞台を生でも観た。このような錚々たるダンサー達の『眠り』を観た後では、それ以来観たものの多くはつまらなく、色あせて思えた。

長いことこれは古い型のレーザーディスクで上記の『眠り』を繰り返し観てきたから少々飽きてしまったのだと思ってきたが、最近になって、この、有名で愛されている『眠り』の音楽、ことに第三幕のオーロラとデジーレ王子のグラン・パ・ド・ドゥの音楽は意外にも難しいのである。難しいとはいっても、拍数が難解であるとか、テンポが複雑であるということではない。流れるような美しいメロディーの下にとてもはっきりしたリズムが刻まれているのである。そして、何が難しいと言って、ダンサー達はそのメロディーとリズムを両方とも自分のものにして踊れないと、素晴らしく、しかも軽々と踊っているように見えないのである。

今回のボリショイ・バレエから、世界の映画館への生中継された『眠り』は、嬉しい驚きだった。オルガ・スミルノワとセミョーン・チュディンは二人とも素晴らしい音楽性の持ち主で、まるで彼らの身体が踊ることで音楽を紡ぎだすように見えるのである。この二人のダンサーの技術は研ぎ澄まされているにもかかわらず、決して下品にひけらかすことはないのである。スミルノワは誕生日にわくわくしている、初々しくはにかむオーロラ姫、半透明ような美しい幻、そして、幸せいっぱいの光り輝くような花嫁であった。チュディンは気品があり、幻で見た美しい姫君を救う決意あらたかな貴公子であり、相手役の女性がいかに美しく見えるかを知り尽くした信頼のおけるパートナーである。

残念ながら、リラの精を踊ったユリア・ステパーノワは優美でしかも威厳のある役柄を表現しきれなかった。また、カラボスを演じた、アレクセイ・ロパレヴィッチも残念ながら、女装の喜劇俳優のようになってしまっていた。キーロフ(現マリンスキー)・バレエで昔カラボスを演じたウラジミール・ロプホフは、歳をとり、昔の威力はなくなってしまい、魔法の力しか頼るもののない世を憎んでいる老女を演じたものである。

青い鳥と求婚者の一人を踊った、アーチェミー・ベリヤーコフはしばらく前から気になる存在ではあったが、昨夏ボリショイ・バレエのロンドン公演で踊った『白鳥の湖』の悪の天才(いわゆるロットバルト)を観た頃から、確実に私の中で、気に入ったダンサーにのし上がってきた。ベリヤーコフが最初にこの大役に抜擢されたのは、ボリショイ・バレエ学校(イリヤ・クズネツォフのクラス)を卒業し、入団してわずか三年ほどの頃で、それからどんどんと頭角を現し、技術、芸術性ともに兼ね備えた、カリスマ性のあるダンサーに成長してきている。彼は飛び上がるたびに一瞬宙に浮くような力強いジャンプと、安定したピルエットを兼ね備え、しっかりと技術をコントロールする力も持っているので、いとも簡単に踊っているようにも見え、プリンシパル・ダンサーに昇格するのも時間の問題と思われる。

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アーチェミー・ベリヤーコフの悪の権化 (Photo: Bolsjoi Ballet

ユーリ・グリゴロヴィッチは2011年にこの『眠り』のバージョンを再振付し、また音楽もいろいろカットし、もともとはプロローグと三幕あったこのバレエを二幕でみせるようにしてある。勿論慣れたものには音楽がカットされたものや、ものによっては短く編曲しなおされたのはわかるが、物語の流れに無理はなく、かえって観客にもぞもぞするような隙をほとんど与えないようだ。嬉しいことに、1982年にウラジミール・ワシリエフがアサフ・メッセレルの生誕80年記念のガラで踊った王子のソロは残してあった。これによって、王子の役柄の輪郭がはっきりとし、いきいきと描き出されたようだ。

結局、スミルノワ、チュディンとベリヤーコフは私のお伽話への憧れを再燃焼させ、『眠りの森の美女』への愛情を再認識させたようだ。

ポワントのつま先は何でできているの?

バレエダンサーがつま先で立てるために、ポワントの先をどのように固くしてあるかご存知ですか?

ところで、案外よくされる質問が、バレエダンサーはポワントのなかで、足のどの部分で立っているのか、というものです。ダンサー達は、足指を伸ばし切った状態で、文字通りつま先で立っているのです。どんなに細くて軽いダンサーでも、踊っている間に身体の全体重を支えるためには、足首、足やつま先はうんと強くなくてはいけません。

さて、本題にもどって、ポワントのつま先は、何でできているのでしょうか?

たまに、ダンサーでない方々から、ポワントの先は木でできているのか、と聞かれます。あるいは薄い鉛か何かの板が入っているのかとおっしゃる方もいます。木や鉛などでは、バレエに必要なダンサーの体重を支える強さと同時に踊るために必要な、また、けがをしないための動きが出ません。

伝統的なポワントの作り方では、つま先のまわり、「ボックス」と呼ばれる部分は布や麻、場合によってはボール紙などを特別性の糊で固めてあります。最近ではプラスチックなどの物を使う潰れにくいものも出てきています。

伝統的な方法で作られるポワントは一足づつ手で縫われ、最初は裏返しの状態で始まり、最後のほうになってくるりとひっくり返して完成されます。特別の製法はボックス部分のみでなく、靴底、靴の内側の底、そして、その間にシャンクという靴底を補強しつつ曲げられるようにするためのものがあります。

ポワントは製造者によって製法は少しづつ違います。真っ新のポワントはメーカーによってそれぞれ違う匂いがするものです。これはおそらく糊の成分や製法が異なっているからだと思われます。それぞれのメーカーは各々の糊のレシピをトップシークレットとして守っています。

私が昔履いていたポワントのなかのあるものはボックスにボール紙が入っていましたし、靴底が四重になっているものもありました。あるいは小さく短い釘が打ってあり、自分の履きやすい柔らかさにするためにはそれを引っこ抜かなくてはいけないものもありましたし、底が糊付けされているのではなく、ぐるりと縫ってある物もありました。

自分の足に完璧にフィットするポワントを見つけるのはなかなか難しいですが、めぐり会えれば履き心地よく、足のラインをより綺麗に見せ、安定します。ただし技術が向上するにつれて足の形や動き方も変わるのでポワントがきちんと合っているかをいつも確認することが重要です。

ポワントの歴史についてはまた他の機会に!

初心者や小さな子供のためのバレエ教師

「上級クラスが教えられるほどはバレエできないけど、初心者や小さい子供だったら大丈夫!」と言うような言葉を聞くたびにいたたまれないような気分になる。

バレエを教え始めてだいぶたつが、小さい子供から、大人まで、また、全くの初心者から、プロのダンサーまで教えてきた。その中で一番きつく、それでいてやりがいがあるものは、年齢に関係なく、バレエを生まれて初めて始める生徒のクラスである。新しくバレエを始める生徒はもちろんバレエのことをよくは知らないが、それを教える教師がバレエのことをあまり知らないで何とかなると思うのは大間違えである。それどころか、教師はバレエの技術、歴史、個々のバレエのレパートリー、解剖学等についての深い知識、怪我をしないようにするにはどうするか、また色々なメソッドのことや、その個々の違い等についての知識も必要である。また、個々の生徒の能力を見抜き各々に必要な注意や教え方を探りだしていかなくてはならない。

YKBGレッスン風景。 ©YKBG

YKBGレッスン風景。
©YKBG

新しい生徒は往々にしてバレエに関しての疑問点を多く持っている。また、多くの生徒は筋肉疲労の時の対応方法や、他のスポーツなどをした時の不調などについても質問してくる。教師は生徒が痛みや怪我がない状態で自己最高の上達が目指せるように、個々に会ったアドバイスをできることが必要不可欠である。

私のところに来ている、ダンサーで、他の先生について学んだ(ことに初心者や、あまり長くはバレエをやっていないダンサー達)ものの多くが、以前の先生は大人のバレエクラスでは大体においてあまり注意されることもなく、適当にほおっておかれることもあると言うものが多い。人によっては、私が脚や腕を触ってきちんとしたポジションに直すのにびっくりするようである。私は今まで、大人になってからバレエを始めたからと言って、上達しないダンサーに一人として出会ったことがない。何故きちんと教えないような教師がいるのかほとほと理解に苦しむ。

場所の如何にかかわらず、若く経験も乏しい教師や助教に小さい子供のクラスを教えさせるバレエ教室を沢山見てきた。一番影響を受けやすい、バレエを習い始める時こそ生徒にとって一番大事な時である。知識不足や下手な教え方は、素晴らしいバレエ・ダンサーになれるかもしれない可能性を蕾の内に摘み取ってしまうのである。十年、二十年前に習った時からの悪癖からなかなか抜けられないダンサーを多く見てきたが、これは習い始めたころに教師がきちんと矯正していれば、完全に克服できるものばかりである。

このようなことは本当に嘆かわしいいことであるが、もちろん素晴らしい教師とバレエ教室も多々あり、そういうところでは、教師はある限りの知識を惜しみなく生徒達に分け与えるし、生徒達も発奮し、上達を促され、往々にして教師と生徒の間に強い絆が生まれるのである。もしこれからバレエを習おうとお考えなら、またはお子さんにバレエを習わせようとお思いならば、多くの場所を見学し、知識豊富で経験豊かなうえに良心的な教師を見つけられたし。

今世紀最高のバレリーナの一人、マヤ・プリセツカヤが89歳で死去

瀕死の白鳥を踊るマヤ・プリセツカヤ

私の永遠の偶像で、インスピレーションの源であったマヤ・プリセツカヤが5月2日ドイツの自宅で心臓発作のために亡くなった。89歳だった。

プリセツカヤはソヴィエト時代のモスクワに1925年に生まれ、ボリショイ・バレエ学校を卒業した後、ボリショイ・バレエ団入団し、プリンシパルまで上り詰めた。

この記事はプリセツカヤの人生や業績を語る為のものではない。ニューヨーク・タイムズのソフィア・キショコフスキー氏が詳しく興味深い追悼記を書いている。http://www.nytimes.com/2015/05/03/arts/dance/maya-plisetskaya-ballerina-who-embodied-bolshoi-dies-at-89.html?smprod=nytcore-iphone&smid=nytcore-iphone-share&_r=0

プリセツカヤは私が初めて観たダンサーの一人で、私の人生にすさまじい影響を与えた張本人である。彼女を通してバレエでは技術というものは表現のための手段であり、最終目標ではありえないことや、さまざまなことを学んだ。

以前にプリセツカヤが私の人生にどんな影響を与えたかを書いた記事をご覧ください。

https://kodamaballetinjapanese.wordpress.com/2012/10/19/%E3%83%9E%E3%83%A4%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%BB%E3%83%84%E3%82%AB%E3%83%A4/

心よりご冥福をお祈りいたします。欧米でよく言われる、「彼女の御霊が安らかに休めますように」というのはプリセツカヤに限ってはどうも適当でないように思われる。彼女はこれからもいつまでも私や彼女を観たことのある多くの人々の胸のなかで踊り続けていくのであろう。

バレエの足のポジション

ピエール・ボーシャン ©Yuka Kodama Ballet Group

ピエール・ボーシャン ©Yuka Kodama Ballet Group

バレエの足の五つのポジションはフランス人の振付家でダンサーでもあったピエール・ボーシャン(1631~1705)により統一され、今にいたるまでクラシック・バレエの基本となっている。

これらのポジションをとるときには、怪我をしないように、また技術の上達を妨げたり、脚の筋肉がおかしなところについたり、異様に発達してしまったりしないように、脚全体と身体をきちんと真っ直ぐにしなくてはいけない。

脚が膝をねじらずに真っ直ぐになっているかどうかを確かめつつ、脚を強くする訓練になるエクササイズをご紹介しよう。テニスボールを足首の踝の上のあたりに挟み、足を平行にして立つ。この時に足はびったり合わさっていなくてよい。内腿(ことに薄筋という筋肉を使う)の筋肉を使い、脚を引き上げるような感じでボールをぎゅっと挟む。膝とつま先が真っ直ぐに揃っていて、内腿の筋肉がきちんと使えていると、テニスボールはきっちりと挟めているので、誰かに頼んでちょっと引っ張ってもらっても、そう簡単には取れない(もちろん思い切り引っ張られれば話は別だが)。テニスボールを挟んだまま、力を抜かずに、またおしりを突き出さずに膝を曲げ、プリエをする。その後また膝を伸ばし、今度はレレヴェをしてみる。これを数回ずつ毎日繰り返すと、内腿の筋肉が訓練でき、また膝とつま先を真っ直ぐにすることになれることができる。

このエクササイズをするときは、テニスボールをしっかりと押している感覚を失わないように注意。©Yuka Kodama Ballet Group

このエクササイズをするときは、テニスボールをしっかりと押している感覚を失わないように注意。©Yuka Kodama Ballet Group

正しい筋肉を使い、真っ直ぐに引き上げ、膝も足首もねじれていない脚(左)と、脚を外側に押し出すようにしているので、膝が内に押され、足首もねじれてしまっている脚(右)

正しい筋肉を使い、真っ直ぐに引き上げ、膝も足首もねじれていない脚(左)と、脚を外側に押し出すようにしているので、膝が内に押され、足首もねじれてしまっている脚(右)

膝とつま先を真っ直ぐにして立てるようになったら、足を平行に並べて立ち、膝を緩めないまま、踵に重心を移し、つま先と土踏まずを持ち上げ、そのまま脚を付け根から開き、できる限り開き切ったところでつま先を床におろしたところが、第一ポジションとなる。脚は必ず付け根から開くこと。つま先だけを外に向けて開こうとすると、膝や足首がねじられ、不必要な負担をかけ、怪我につながり、不必要な筋肉の発達を促す。

第一ポジション©Yuka Kodama Ballet Group

第一ポジション©Yuka Kodama Ballet Group

次に挙げるのは、膝とつま先がきちんと真っ直ぐになっているかをチェックする良い方法である。どのポジションで立っていてもよいが、足指の付け根は床にしっかりとつけたまま、足指を持ち上げてみる。膝や足首がねじれていると、足指の付け根に過剰な負担がかかり、これはなかなかできない。また、足の三カ所、踵の真ん中、第一指と第二指の間あたりと第四指と第五指の間あたりの三点である。

第一ポジションから、片方の足(バーにつかまっているのであれば、バーと反対側の足)を押し出すように、重心は軸足にのみ載せるようにして、足先を伸ばしながら、つま先が伸びきるまで押し出す。この時につま先は床から持ち上がらないように注意。それから重心を二本の脚の真ん中にくるまで移しながら伸ばした足の踵をおろす。踵と踵の間の距離は約足の長さ分。外側の足のつま先を、軸足の踵につけ、足が一直線になるように立ち、後ろ側の足を踵を軸にしてピヴォットさせ、足が開き切ったところでつま先をおろすと、綺麗な第二ポジションになる。

第二ポジションへの移動のしかた©Yuka Kodama Ballet Group

第二ポジションへの移動のしかた©Yuka Kodama Ballet Group

第二ポジションの幅の確認のしかた©Yuka Kodama Ballet Group

第二ポジションの幅の確認のしかた©Yuka Kodama Ballet Group

第三ポジション©Yuka Kodama Ballet Group

第三ポジション©Yuka Kodama Ballet Group

次に、外側の足を踵からあげていき、バランスを徐々に軸足に移動させ、伸ばし切り、その足を軸足の前に重ねるように入れてきて、踵が反対の足の土踏まずの前あたりまで来るように重ねる。これが第三ポジションである。教師によってはこれを第五ポジションが綺麗に入らない場合に使わせるが、私はこれをあまり奨励しない。このポジションに慣れてしまうと、第五ポジションにするときに、ついつい脚のクロスが甘くなりがちなのである。

次は第四ポジションである。第三、あるいは第五ポジションからは、まず前足を踵から押し出すように前に伸ばし、伸ばし切った後でつま先を外に開きながらほんの少し軸足のほうに戻し、踵を軸足と平行になるようにおろす。足と足の間の距離は、自分の足の長さより少し短いくらいにする。この距離を測るのには、まず前になる足の踵を軸足の踵に90°の角度で当て、前足を足指の付け根を軸に踵を押し出すようにまわし、第四ポジションにおろすと綺麗なポジションができる。

第四ポジションの幅の確認の仕方©Yuka Kodama Ballet Group

第四ポジションの幅の確認の仕方©Yuka Kodama Ballet Group

第四ポジション©Yuka Kodama Ballet Group

第四ポジション©Yuka Kodama Ballet Group

第二ポジションから第四ポジションに入れる場合は、まず外側の足を踵から持ち上げ伸ばし(つま先は床を離れないように注意する)、重心は軸足にもどす。伸ばした脚を踵を前に押すようにして、つま先で床に四分の一円を描くように前に持っていき、上に記したように踵をおろす。

第五ポジションにいくには、まず前足を押し出して伸ばし切り、それからつま先を横に向けるように脚を常に開いた状態で腿をバッテンにするように脚を重ね、両足が平行になるように踵とつま先を合わせる。

第五ポジションへの入れ方。©Yuka Kodama Ballet Group

第五ポジションへの入れ方。©Yuka Kodama Ballet Group

第二ポジションからの場合は、脚を伸ばした後第三ポジションに入れるように真っ直ぐ入れるか、第四ポジションに入れるときのように脚を回してから第五ポジションまでいれる。

ダンサーのアンドゥオールが充分でなかったり、柔軟性が足りない場合は、膝をねじって無理に足先を開くのではなく、第一ポジションが180°でなかったり、あるいは第五ポジションが完全な形になっていなくとも、できるだけ脚の付け根から開き、毎日少しづつ余分に開くように頑張って練習するべきである。私のダンサー達はこの方法で徐々に綺麗なポジションになってきている。

インターネット上でバレエのポジションを検索すると、あるソースに、セルジュ・リファール(1905~1986)が1930年代に二つのポジション(第六ポジションと第七ポジション)の再使用をパリ・オペラ座で始めたが、これはリファールの振付に独特のポジションであったとあるが、これはおかしい。リファールが番号をつけなおしたのかはしれないが、両方のポジションともリファールの振付だけではなくマリウス・プティパを含む様々な古典バレエの振付に使用されている。

第六ポジションオン・ポワント©Yuka Kodama Ballet Group

第六ポジションオン・ポワント©Yuka Kodama Ballet Group

第六ポジションは前述したポジションである。足を合わせて平行に立ったものが第六ポジションと呼ばれる。これはパリ・オペラ座系統でなくともそう呼んでいるところが多い。

第七ポジションもよく使われるポジションであるが、私の知る限りでは普通は第七とは呼ばれない。このポジションは第四ポジションで踵が縦一列に並ぶようにレレヴェしたものである。これは普通第四ポジション(ドゥミ・)ポワントと呼ばれる。

第四ポジション・オン・ポワント、あるいはセルジュ・リファールの第七ポジション©Yuka Kodama Ballet Group

第四ポジション・オン・ポワント、あるいはセルジュ・リファールの第七ポジション©Yuka Kodama Ballet Group

どのポジションに立つとしても、忘れずに膝とつま先の方向をそろえ、脚を付け根から開き、顎を上げて、ダンサーの誇りを持って立つことを心がけて頂きたい。

スパルタクス―ボリショイバレエ映画館生中継

2013年10月20日、ボリショイ劇場から、世界各国の映画館へバレエ団の公演、スパルタクスが生中継された。

ウラジミール・ワシリエフ

ウラジミール・ワシリエフ

前ボリショイバレエ団プリンシパル、また、スパルタクス役の初演者(1968年)であるウラジミール・ワシリエフが幕間にインタビューをされていた。ワシリエフは昔も今も私のもっとも崇拝するダンサーの一人である。73歳である今も、ボリショイ劇場の舞台の端に立ってインタビューをされているだけでも、ワシリエフは見るものを掴んで離さない、往年のカリスマを振りまいていた。彼はつい昨日のことのように、スパルタクスを踊った時はいつもいかに役になり切り、舞台上でスパルタクスの人生を生きた、と少年のように興奮して語った。

ウラジミール・ワシリエフとマリス・リエパ

ウラジミール・ワシリエフとマリス・リエパ

この日の主役二人、ミハイル・ロブーヒンとヴラディスラフ・ラントラートフは正にワシリエフの言った通りに、三時間の上演時間中スパルタクスとクラッソスの人生を生きていた。ロブーヒンとラントラートフは、初演キャストであり、私の気に入りのスパルタクスとクラッソスでもあるワシリエフとマリス・リエパとはかなり違った解釈で踊り、自分なりで、しかも原作に忠実なスパルタクスとクラッソスを創り上げていた。スパルタクスは情熱的で躍動的に、クラッソスは権力一杯、貴族的、居丈高でしかもカリスマ性充分に。ロブーヒンとラントラートフがどちらも他のダンサーの役柄の解釈を真似せず、自分たちなりの役を創り上げたは嬉しい限りであった。

ボリショイバレエ団には数えきれないほどの往年の素晴らしい元ダンサー達が若い才能のある踊り手を育て、導いている。私は前々から、これほど沢山の素晴らしいカリスマ性のある元スター達の元で若い才能が学ぶことは素晴らしいと思う反面、自分流の解釈を持つ、新しい才能がどれほど生まれやすいかと危ぶんでいる面もあった。ボリショイバレエにあるカリスマ性があり、才能たっぷりの人材に導いてもらう、ということは、どのダンサーにとっても喉から手が出るほど素晴らしいチャンスであるが、若いダンサー達が、あれほど天才的な先輩達の模倣をせずにいられるだろうか?だが、この先輩達は、自身が天才的なカリスマ性たっぷりのダンサーであったのと同時に、素晴らしい影響をあたえ、しかもダンサー自身が自分の役柄を自分自身で探し、インスピレーションを得られるように導いていくことができるようである。

ミハイル・ロブーヒン(スパルタクス)とマリアナ・リズキナ

ミハイル・ロブーヒン(スパルタクス)とマリアナ・リズキナ

ロブーヒンはワガノワ・アカデミーで教育を受け、三年ほど前にボリショイバレエに移籍した。以前グリゴローヴィッチのロミオとジュリエットでの彼のティボルトを見たが、その時にはあまり良いとは思わなかった。その他にはアレクセイ・ラトマンスキーの明るい小川での若い農夫の役を踊るのと見ただけだったので、彼がスパルタクス役を踊るのを知って、かなり疑問に思っていた。嬉しいことにこれは杞憂であった。ロブーヒンのスパルタクスは情熱的で愛情深く、感動的であった。ある意味では、他のスパルタクスよりは繊細な面があったが、これは役柄に細やかな面を与え、力強さを損なうものでは全くなかった。

ヴラディスラフ・ラントラートフのクラッソスとスヴぇトラーナ・ザハロワのエギナ

ヴラディスラフ・ラントラートフのクラッソスとスヴェトラーナ・ザハロワのエギナ

ラントラートフは最近プリンシパルダンサーに昇進したばかりだが、それに恥ずかしくない踊りをした。私が今まで見たのはもっと優しい感じの役柄ばかりだったのだが、彼は少々狂気じみた誇り高い将軍クラッソスになり切っていた。

主役の男性二人は高い技術と素晴らしいコントロールを駆使し、役柄とその役それぞれの感情面を表現していた。技術面の達成が決して目的ではないのがよくわかる舞台であった。

スヴェトラーナ・ザハロワのエギナ

スヴェトラーナ・ザハロワのエギナ

また、エギナを踊ったスヴェトラーナ・ザハロワについても同じことが言えた。ザハロワは豪華で自身たっぷりで美しく、挑発的であり、非常に楽しそうに踊っていた。私個人としては、他に観た役より、このエギナの役のザハロワのほうが好きである。他のクラシックの役ではできないような解放感があるように思われた。

この三人のダンサーが心の赴くままに踊っているように見え、技術面より役柄の感情が伝わってきたのに対して、スパルタクスの妻フリギアを踊った、アンナ・ニクリナにはがっかりさせられた。彼女の踊りは、よく練習した振りを自分が何故そのような動きをしているのが全く理解できないままなぞっているように見えた。これはこの大作バレエの最後、スパルタクスの死後のフリギアの嘆きの場をがっかりするものに変えてしまった。エカテリーナ・マクシーモワや、リュドミラ・セメニャカがこの場面を踊るのを見るたびに涙が止まらなくなったものだが、今回は涙が出なかったばかりでなく、ニクリナの演技を見ていると、マクシーモワやセメニャカを見たいと思わせられた。

エカテリーナ・マクシーモワのフリギア

エカテリーナ・マクシーモワのフリギア

アラム・ハチャトリアンの音楽とグリゴローヴィッチの振付は見るものを否応なしにこの物語の登場人物の感情に引き込んでいく。この日の出演者は主役から脇役に至るまで皆それを感じたようであった。大体において、この日の公演はボリショイバレエの真髄を見せつけるかの様な公演であった。もちろん、フリギアは難しい役である。主役四人のうち、フリギアが一番癖のない性格をしている。アクの強い役というものはやりやすいものだ。ニクリナはまだ若いので、これから素晴らしいフリギアが踊れるようなダンサーに成長するかもしれない。

最後に、もう一つ。私が知っている限りでは、振付に一つ変更があった。ひどく小さい変更ではあったが、私にとっては大きな違いである。スパルタクスが目隠しをされ、クラッソスの前に引き出され、もう一人の剣闘士と戦う場面で、緊迫した数分の後相手の剣闘士を刺し殺す。(この日はデニス・サヴァンが踊った。彼も私がもっと見てみたいと思うダンサーの一人である。技術もしっかりしており、非常に劇的なダンサーである)私が今まで見た公演では、スパルタクスが相手のヘルメットを取り除いたときに、相手の目はしっかりと見開かれており、それをスパルタクスが優しく閉ざしてあげるのであった。今回は彼の目は閉じていた。これはサヴァンを幼く、弱々しく見せていたが、全体の印象が全く違っていた。私は昔から、何故かスパルタクスはこの自分が刺し殺した剣闘士を知っていて、この時がクラッソスの体現しているローマ帝国に反旗を翻す決心をした瞬間だと思っている。

ポワントにリボンを縫い付ける方法―付記

以前投稿した、ポワントにリボンを縫い付ける方法の記事について質問を下さった方がおられたので、それにお答えする付記です。(https://kodamaballetinjapanese.wordpress.com/2013/09/15/%E3%83%9D%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%83%88%E3%81%AB%E3%83%AA%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%82%92%E7%B8%AB%E3%81%84%E4%BB%98%E3%81%91%E3%82%8B%E6%96%B9%E6%B3%95/)

『短めのゴムをかかとの縫い目のところに、アキレスの後ろあたりまでの長さのループにして縫い付け、それにリボンを通すと、ポワントのかかとが脱げないで良く、足首の周りにリボンとゴムの両方があるという煩わしさがない。』

上記のもう少し詳しい説明である。

©Yuka Kodama Ballet Group

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右の写真のように、靴の踵の縁から、足首までの長さの二倍のゴム(かなり強めのものを使用されたし)を輪にして縁に縫い付ける。この場合、重ねて縫ってもよいし、少しだけずらして縫っても大丈夫である。

©Yuka Kodama Ballet Group

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このやや小さめのループに、リボンを巻くときに最初に巻くほうのリボン(必ず足の内側のリボンを先に巻くこと。そうでないと、ポワントが足にきっちりとなじみにくいので。)をゴムに通して足首に巻く。二本目のほうは通さなくて大丈夫である。あとは普通にリボンを巻き終わり、踊るだけである。

©Yuka Kodama Ballet Group

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私はこの方法をしばらく使っていた。足首の周りにゴムとリボンの両方がないと、煩わしくなく、気に入っていた。この後、足にとてもよく合ったポワントを見つけ、それはゴムなしでも踵が脱げないほど足にぴったりと合ったので、ゴムは用済みになってしまった。

©Yuka Kodama Ballet Group

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